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  • Snowflakeは、AIが使われるほど儲かるのか——売上成長の裏側にある原価の問題

    Snowflakeは、AIが使われるほど儲かるのか——売上成長の裏側にある原価の問題

    Snowflakeは、AIが使われるほど儲かるのか——売上成長の裏側にある原価の問題

    はじめに:AIが使われるほど、利益も増えるのか

    AIの利用が広がれば、AIサービスを提供する企業の売上も増える。では、利益も同じように増えるのだろうか。

    企業向けのデータ基盤を提供するSnowflakeは、この問いを考えるうえで分かりやすい事例である。同社は、ソフトウェアを使う人数ではなく、実際に使われた計算処理の量に応じて課金する。AIエージェントが企業のデータを扱う機会が増えれば、その分だけ売上が伸びる形になっている。

    実際、2026年7月末に終わった四半期の製品売上は前年同期比37%増となり、伸び率が高まるのは3四半期連続だった。経営陣は、この加速のおよそ半分がAI製品によるものだと説明している。

    一方で、同社は同じ決算発表で、通期の製品粗利率の見通しを75%から74%へ引き下げている。

    背景にあるのは、AI特有の原価の構造である。AIの処理には、従来のクラウド基盤の費用に加えて、外部のAIモデルへの支払いが発生する。利用が増えれば売上は伸びるが、原価も同時に増える。

    こうしたなかで、SnowflakeはAI専用の課金単位「AI Credits」への移行を進めた。もともと使った量に応じて課金していた会社が、なぜAIのために別の価格体系を用意したのか。

    そこを読み解くと、AIを提供する企業が売上の成長と利益率を両立させるうえで直面する課題が見えてくる。

    1. 使われるほど売上が増える会社

    Snowflakeは、企業がデータを集め、分析するためのクラウド基盤を提供している。2026年1月期の製品売上は44.7億ドル、前年比29%増だった。

    課金の仕組みは、利用者数に応じた課金とは根本的に違う。年次報告書(10-K)は、売上を「顧客が計算処理、ストレージ、データ転送を消費するにつれて認識する」と書く。多くの顧客は一定量の利用を前もって契約して支払うが、売上になるのは実際に使われた時点である。公式ドキュメントにも「席ごとの料金はない」と明記されている。

    この仕組みの下では、顧客がAIを使ってデータを扱う量が増えれば、そのまま売上が増える。AIエージェントの普及は、この会社にとって素直な追い風に見える。

    2. 成長の加速と、利益率への圧力

    実際、数字は追い風を示している。2026年7月末に終わった四半期の製品売上は14.9億ドルで37%増。通期の見通しも31%増から36%増へ引き上げられた。

    しかし同じ決算発表で、通期の製品粗利率の見通しは引き下げられた。財務責任者は理由を、「急成長しているAIのワークロードの構成比が高まっており、それらは現時点では貢献利益率が低い」ためと説明している。5月にも「AI製品の粗利率はコアの基盤より低い」と述べていた。

    Snowflakeは、AI以前から、顧客の利用量が増えるほど外部のクラウド基盤への支払いも増える事業だった。四半期報告書(10-Q)によれば、製品売上原価の約75%は外部のクラウド基盤に支払う費用である。ここには従来のデータ処理にかかる分に加えて、AIの推論やGPUに関連する費用も含まれる。AI関連の費用だけを取り出した金額は開示されていない。

    AIによって変わったのは、従来のデータ処理とは原価の構造が違うサービスが加わり、その構成比が高まっていることである。10-Qは、コストと粗利率が「AnthropicやOpenAIのような最先端のAIモデル提供者」との価格交渉に左右されるとも書いている。

    加えて、Snowflakeは将来のAI需要を見込んで、外部の事業者に対する一定の支出をあらかじめ約束している。開示されている第三者のAIサービス事業者との契約では、2028年11月までの3年間の最低購入額は3億9,000万ドルで、2026年7月末時点では2億7,000万ドルの購入義務が残っている。各契約年の最低購入額に届かなかった場合には、差額を支払う必要がある。

    ここには、消費型のAI事業に特有の非対称性がある。顧客からの売上は実際に使われた量に応じて立つ一方で、提供する側は、将来の需要を見込んで調達を先に約束する。

    もっとも、この最低購入額は将来の義務を含む契約上の金額であり、当期の費用ではない。製品粗利率の見通しの引き下げが、この契約によって直接生じたと同社が説明しているわけでもない。

    その上で二つを並べると、消費型のAI事業が抱える課題の形が見えてくる。需要が拡大しても、販売価格と原価の差が十分に取れなければ粗利率は下がりうる。一方、需要の拡大を見込んで調達を約束していれば、想定どおりに利用が増えなければ、先行した支出が負担になりうる。

    なお、製品粗利率の低下と、会社全体の収益性の悪化は同じではない。Snowflakeは同じ決算発表で、通期のNon-GAAP営業利益率の見通しを13.5%から14.5%へ引き上げており、財務責任者は「成長を加速させながら営業利益率を拡大した」と述べている。AI関連製品の粗利率に下押し圧力がかかっていても、売上の拡大や営業費用の効率化によって、全社の利益率は改善しうる。

    3. なぜ、AI専用の課金体系を設けたのか

    こうした原価の構造のなかで、SnowflakeはAI関連の機能を対象に、通常のデータ処理とは別の価格体系への移行を進めた。

    公式ドキュメントは、AI Creditsについて「Platform Creditsとは別のもので、エディションにかかわらず一貫した価格を提供する」と説明する。通常の計算処理の単価は契約するエディションによって変わるが、AI Creditsは変わらない。ただし、処理を実行する地域の選び方や年間契約額に応じた割引によって、実際の単価は動く。

    一方で、これは顧客が何かを買い直す話ではない。同じドキュメントは「既存の契約残高と契約条件は変わらず、契約の修正も必要ない」と書いている。既存の仕組みが置き換えられたのではなく、同じ基盤のうちAIを動かす部分に別の料金体系が適用されるようになった、と理解するのが正確である。一部の従来機能は、いまも通常のクレジットで課金されている。

    時期についても、公表資料から特定できるのは移行が進んだ事実までである。2026年4月6日のリリースノートは、エージェント製品などの利用記録を細かく分ける変更を「AI Creditsへの移行の一環」として記し、狙いを「顧客にとっての分かりやすさを高め、より柔軟な価格設定とパッケージングを可能にする」と説明している。決算発表でも、2026年5月から、将来の業績に影響しうる要因の列挙に「AI creditの価格設定」が加わった。

    原価構造との関係について、同社が価格体系を分けた理由として直接説明しているわけではない。ただ、通常のデータ処理とAIでは、使う計算資源も外部モデルへの支払いも異なり、その価格も動く。価格体系を分けておけば、こうした原価の違いを販売価格に反映しやすくなると考えられる。

    要点は、AIの利用量を別の単位で数えること自体ではない。従来のデータ処理の価格体系を保ったまま、AIの原価や競争環境の変化に応じて、AIの価格を独立して設計できることである。

    4. AIが安くなることは、誰の利益になるのか

    AIの価格は、実際に動いている。同社の製品担当幹部は決算説明会で、「最先端のモデルでさえ、定期的に値下げされている」と述べた。

    原価が下がったとき、企業には、価格に還元するか、利幅として残すか、その中間を取るかという選択がある。ここまでは、原価が下がったどの事業にも共通する話である。

    消費型のAI事業には、もう一つの難しさがある。顧客のコストを減らすことが、そのまま提供する側の売上の減少になりうることだ。

    ある企業がAIを使って、毎月1万件の問い合わせを処理しているとする。効率化によって同じ処理が半分の費用でできるようになれば、顧客にとっては明確な利点である。しかし、使われた量に応じて課金する提供側から見れば、同じ仕事量から立つ売上は減る。

    一方で、処理の費用が下がったことで、これまで採算が合わなかった業務にもAIを使えるようになるかもしれない。対象が1万件から5万件へ広がれば、1件あたりの単価が下がっても、全体の売上は増えうる。

    Snowflake自身も、製品の効率化によって顧客が同じ処理を少ない利用量で済ませられるようになり、新しい処理の増加で補えなければ売上が減りうると、年次報告書に書いている。

    それでも同社は、顧客がAIの支出を管理するための機能を提供している。CEOは、AIアシスタントのコスト管理の機能がよく使われる上位10に入っていると述べ、利用者ごとのトークン量の制限といった仕組みを用意していると説明した。短期の利用量を最大にすることよりも、顧客が安心してAIを使う範囲を広げられる状態を作るほうが、将来の成長につながりうるという判断と読める。

    効いてくるのは、単価の低下を補うだけの新しい需要が生まれるかどうかである。AIの効率化は、既存の仕事を安くするだけなのか。それとも、これまでAIを使えなかった仕事まで対象を広げるのか。その違いによって、消費型のAI事業の成長の姿は変わる。

    5. AIの成長を評価するために、何を見るべきか

    では、外からこの会社のAIを評価するとき、何を見ればよいか。

    分かりやすいのは、AIを使っているアカウントの数である。2026年9月の決算発表では、コーディング支援のAIアシスタントが9,100超のアカウント(四半期で2,000超の増加)、データを扱うエージェント製品が5,800アカウントに広がったと説明された。ただしこれらは、AIが使われ始めていることを示す数字であって、その利用がどれだけの利益を生んでいるかは分からない。AI売上の金額は、2025年12月の決算説明会でCEOが「年換算1億ドル」と一度触れたのを除いて開示されておらず、財務諸表にAI売上の区分もない。

    継続して追えるのは、製品粗利率と営業利益率の両方である。AI製品の構成比が高まるなかで粗利率がどう動くかと、その変化を踏まえて全社の利益率がどう推移するかは、別々に確認する必要がある。

    AI Creditsの価格体系や外部調達の契約の変化も手がかりになる。ただし、公開されている価格表から実際の販売単価やAI事業単独の利益率を計算することはできないし、最低購入額の大きさだけで将来の需要を判断することもできない。

    Snowflakeは価格の体系としてはAIを分けた一方で、AI事業単独の売上や利益率を継続して開示しているわけではない。価格設計上の分離と、財務開示上の分離は別のことである。

    おわりに:AIの成長を、何で測るのか

    Snowflakeは、もともと利用量に応じて課金する会社である。AIエージェントの普及によってデータ処理の需要が広がれば、同社の成長機会も広がる。

    しかし、AIの利用が増えることと、利益が増えることは同じではない。外部のAIモデルへの支払いが増えれば、売上が拡大しても利益率は下がりうる。AI専用の価格体系への移行を進めたことは、こうした原価の違いを価格設計に反映させるうえで意味のある変化と読める。

    さらに、AIの処理単価が下がることも、提供する企業の利益が増えることを意味しない。原価の低下分を顧客に還元するのか、自社の利益として確保するのか。価格を下げることで、より大きな需要を生み出せるのか。AIが普及するほど、この選択の重みが増す。

    前回のSalesforceの記事では、AIによって生まれた価値を企業がどう測り、投資家にどう説明するかを取り上げた。今回のSnowflakeが示しているのは、AIの利用の拡大を、どうすれば続く利益の成長につなげられるかという問題である。

    AIの処理単価が下がることは、顧客にとっては歓迎すべき変化である。しかし、提供する企業にとっては、必ずしも売上や利益の増加を意味しない。原価の低下を利益率の改善につなげられるか。価格の還元によって、単価の低下を上回る新しい需要を生み出せるか。AI企業の成長を評価するうえでは、利用者の数や売上の伸びだけでなく、この価格・原価・需要の関係にも目を向けたい。


    Disclaimer

    本稿は、同社の公表資料にもとづく独立した分析であり、特定の組織の公式見解ではありません。

    本稿は特定の証券の売買を推奨するものではなく、投資助言・投資勧誘ではありません。 将来の株価、企業価値の割高・割安、投資判断に関する見解を示すものではありません。

    本稿の記述は、決算発表資料、SECへの提出書類、決算説明会の公開記録、および同社が公開している価格表・ドキュメントの範囲に限られます。内部情報には一切依拠していません。

    筆者は JAPAN AI 株式会社および株式会社ジーニーに所属しますが、本稿は Alpha Beyond Frontier における筆者個人の独立した分析であり、所属各社の公式見解を示すものではありません。

    記載した数値および事実は、各出典の公表時点のものです。

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    はじめに:安くなっているのに、利益率が上がらない

    AIを動かすコスト——推論コストは、この数年で急速に下がっている。ならば、素直にこう考えたくなる。原価が下がるのだから、AI企業の利益率も、いずれ従来のソフトウェア(SaaS)並みに戻っていくはずだ、と。ソフトウェアの粗利率は8割から9割が当たり前だった。AI企業は今は5割前後だと言われるが、それも時間の問題ではないか——。

    だが、そうはなっていない。推論の単価が大きく下がっても、AI企業の利益率は、自動的にSaaSの水準へ近づいてはいない。なぜか。

    本稿の答えを先に言えば、こうだ。AI企業の利益率を決めているのは、推論の単価だけではない。品質と責任を担保するために残るコストを、どこまで複数の顧客に再利用できるか——である。

    1. 推論価格は、どれほど下がったか

    まず、事実を正直に認めておきたい。AIの推論コストは、本当に下がっている。

    AI研究機関のEpoch AIが2025年に公表した分析では、同等の性能を得るための推論価格の下落率は、タスクによって年9倍から900倍まで大きく異なり、中央値では年およそ50倍だった。幅は大きいが、方向としては急速に下がっている、と読むのが誠実だろう。

    この事実は重い。AI企業の粗利が低い主因が「推論が高いから」であるなら、推論が安くなるほど粗利は改善し、いずれSaaS並みに戻る、という楽観が成り立つからだ。実際、そう主張する投資家もいる。原価の中心にある計算コストが下がっているのだから、低い粗利は一時的な現象にすぎない、と。

    この反論には、一理ある。だから本稿は、それを否定するところからは始めない。単価は下がっている。その上で、それでも利益率が自動的には近づかない理由を見ていく。

    2. 粗利はなぜ、25%から88%まで分かれるのか

    単価が下がっているのなら、AI企業の粗利は横並びで改善していきそうなものだ。ところが実際の粗利率は、企業によって驚くほど散らばっている。

    スタートアップの段階で見てみる。Bessemer Venture Partnersが2025年に公表したAIスタートアップ20社の調査では、急成長型の「Supernovas」10社の平均粗利率は約25%(一部は粗利がマイナスだった)、より持続的に成長する「Shooting Stars」では約60%だった。同じ急成長AI企業のなかでも、粗利率は倍以上も開いている。

    一方、上場して成熟した企業には、まったく違う数字もある。顧客ごとの実装を重く抱えることで知られるPalantirは、2026年第1四半期に、会計基準(GAAP)ベースで約87%、調整後で88%という高い粗利率を計上した。実装が重い企業でも、高い粗利は不可能ではない。

    ここで注意したいのは、これらを一列に並べないことだ。Bessemerの調査はスタートアップの自己申告に近く、Palantirは監査済みの上場企業である。段階も規模も違う。そして、Palantirの高い粗利を「再利用がうまいから」と一因に決めつけることもできない。高い粗利は、価格決定力や契約の構成、顧客構成にも左右される。なお、粗利率を比べるときは、推論費用だけでなく、導入・運用に関わる人件費をどこまで売上原価に含めているかにも注意が必要だ。同じ業務でも、会計上の区分によって粗利率の見え方は変わりうる。言えるのは、単価の低下だけでは、この25%から88%までのばらつきは説明できない、ということだ。

    3. 残るのは、生成のコストではなく、信頼するためのコスト

    推論の単価が下がっても、簡単には下がらないコストがある。品質と責任を担保するためのコストだ。

    AIの出力は確率的であり、常に同じ正しさが保証されるわけではない。だから、その出力が使えるものかどうかを確かめ、逸脱を防ぎ、本番での挙動を監視し続ける工程が要る。誤りが起きたときに責任を負えるだけの記録と検証も残す。ある研究者が2026年に公表した分析は、この確認のコストを「検証税(Verification Tax)」と名づけた。厄介なのは、モデルの精度が上がるほど、残ったわずかな誤りを見つけ出すのに、かえって多くの検証が要ることだ。エラー率が下がっても、検証のコストは同じ比率では下がらない。

    これらのコストも効率化はできる。だが、推論の単価と同じ速度で下がるとは限らない。生成そのものが安くなっても、その出力を信頼できる状態にするためのコストは、別の曲線を描く。

    単価低下の効果を打ち消す動きもある。推論が安くなると、人はより多く使う。1回あたりが安くなった分、呼び出す回数が増え、より複雑な使い方をする。結果として、単価は下がっても、全体として支払う総額はむしろ増えることがある。効率化がかえって総消費を押し上げる、いわゆるジェヴォンズのパラドックスだ。安くなったから総コストが下がる、とは限らない。

    4. 再利用できるコストと、顧客ごとに再発するコスト

    ここで、コストの見方を一つ提案したい。AI事業のコストを、「一度きり」と「積み上がる」に分けて眺めることだ。これは業界標準の分類ではなく、整理のために置く見方である。

    厳密に言えば、一度しか発生しないかどうかではなく、発生したコストを次の顧客に再利用できるかどうかで分ける。基盤を作る、共通の部品を用意する、評価の仕組みを整える——こうしたコストは、複数の顧客に使い回せれば、規模が大きくなるほど1顧客あたりでは薄まっていく。一方、顧客ごとの作り込み、案件ごとの検証、個別の監視は、共通化できなければ、顧客や利用や出力が増えるたびに再発し続ける。

    利益率を決めるのは、この二つの比率だ。個別対応として再発するコストを、どこまで共通の仕組みや部品へ置き換えられるか。置き換えられれば利益率は上がり、置き換えられなければ、コストは顧客数に比例して残り続け、事業はソフトウェアというより労働集約的なサービス業に近づいていく。

    ただし、この「再利用できる側に寄せられる」という前提そのものへの疑いもある。テクノロジー分析を手がけるSecond Order Labsは2026年の論考で、AI企業では推論費用に加え、導入・統合の人件費が継続的に発生し、事業が実質的にサービス業へ近づくリスクを指摘する。統合は、一度で終わらせられる工程ではない、というわけだ。もしそれが本当なら、再発するコストは構造的に消えにくい。「再利用に寄せられる」という見方を、自明とは考えないほうがいい。

    5. 経営者と投資家は、何を見るべきか

    ここまでを踏まえると、AI企業を「粗利が高いか低いか」だけで語るのが、いかに粗いかが見えてくる。単価でも、粗利率という一つの数字でもなく、見るべきは次の三つだ。

    • 売上1単位あたりの推論・監視・検証のコストは、下がっているか。 単価ではなく、実際に売上に対して原価がどう動いているかを見る。
    • 顧客ごとの個別対応が、共通の部品へ移っているか。 再発するコストが、再利用できる側へ寄っているかどうか。ここが利益率の分かれ目になる。
    • 売上や利用量が増えたとき、人員や検証の工数も同じ比率で増えていないか。 これは、その企業がソフトウェアとして伸びているのか、それともサービス業として伸びているのかを見分ける問いになる。

    同じ50%の粗利でも、再発するコストを抱えたまま止まっている企業と、それを共通の部品へ移し始めている企業とでは、これから先がまるで違う。数字の裏で、コストがどう振る舞っているかを読むことが、AI企業の体力を見分ける手がかりになる。

    おわりに:単価ではなく、構造を見る

    AIは安くなっている。それでも利益率が自動的には上がらないのは、安くなるのが推論の単価であって、品質と責任を担保するために残るコストは、別の曲線を描くからだ。そのコストを、どこまで複数の顧客に再利用できるか——そこで、利益率は分かれる。

    推論が安くなれば利益率はSaaSに戻る、という期待は、コストの一つの側面しか見ていない。そしてこの構造は、次の問いへとつながっていく。再発するコストを共通の部品へ移せる企業と、移せない企業。その差は、やがて誰が競争に生き残るかを分けていく。稿を改めて、AIの競争構造を考えたい。


    本稿は、公開情報にもとづく独立した分析であり、特定の組織の公式見解ではありません。特定企業の財務数値は公表資料・決算の範囲で言及しています。「一度きりのコスト/積み上がるコスト」という整理は、筆者が分析のために用いる枠組みであり、業界標準の定義ではありません。記載した数値は各出典の公表時点のものです。

    References

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